新潟市の湖沼等に生息している甲殻類
信濃川、阿賀野川が海に注ぐ新潟市は、魚類や甲殻類にとっては水域の要衝とも言えます。甲殻類はワラジムシやダンゴムシのように陸生種もいますが、ほとんどは水生で、その大部分は海産種です。淡水の川や潟に生息する種においても、産卵などで海や汽水域を利用する回遊性の生活史をもっている種が多数います。このことからも海とつながる新潟市は甲殻類にとってとても大切な場所ということが分かります。
一方で、外国からの外来種も次第に増えつつあります。以前から生息しているアメリカザリガニのほか、近年になってフロリダマミズヨコエビが確認され、さらに最近になって確認されたカワリヌマエビ属の一種は急激に分布を拡大させています。
このページでは新潟市の潟や河川下流に普通にみられる在来と外来の甲殻類を紹介します。
希少種:新潟市レッドデータブック掲載種
- EX(絶滅)
- EW(野生絶滅)
- EN(絶滅危惧Ⅰ類)
- VU(絶滅危惧Ⅱ類)
- NT(準絶滅危惧)
- LP(地域個体群)
外来種:人為的に持ち込まれた種
- 特定外来生物:特定(外来生物法)
- 条件付特定外来生物:条件付(外来生物法)
- 緊急対策外来種 :緊急 (生態系被害防止外来種リスト)
- 重点対策外来種 :重点 (生態系被害防止外来種リスト)
- その他の総合対策外来種:その他(生態系被害防止外来種リスト)
フロリダマミズヨコエビ(マミズヨコエビ科)
体長5mm程度で、在来種に比べ小型で、淡緑色をしていることが多い。止水、流水問わず生息し、潟や河川下流部にも生息する。小さく見つけにくい。
その他
オオエゾヨコエビ種群(キタヨコエビ科)
体長は10mm程度。湧水や河川、湖沼に生息する。エビの名がつくが、一般的なエビ類(十脚目)とは異なり、ワラジムシなどに近いグループ(端脚目)である。
ミズムシ(ミズムシ科)
体長は10mm程度。水の中にすむワラジムシの仲間。流れの緩い河川、潟や池の水辺に生息する。落葉の堆積など有機汚染の進んだ水域にも多くみられる。
カワリヌマエビ属の一種(ヌマエビ科)
中国などからの外来種。体長は30mm程度で、体色は変化に富む。流れの緩い河川や水路、潟の岸辺に生息する。ヌカエビとは、上から見て複眼が斜め前方向に向くことで識別可能。
ヌカエビ(ヌマエビ科)
体長は30mm程度の小さなエビ。小型個体やオスは透明に近いが、大型のメスは体色が濃い。河川や潟、池など淡水域に分布し、水草や堆積した落葉、流木の隙間などを利用して生息。
NT
テナガエビ(テナガエビ科)
体長90mm程度になる大型のエビ。鋏脚が長いことが特徴。新潟市内では河川下流域とそれと直結する潟に生息。日中は護岸やテトラポットの下、植物の陰に潜み、夜間に活発に行動する。
NT
スジエビ(テナガエビ科)
体長は30~50mm程度でメスの方が大きい。体色は半透明で、濃褐色の帯状の縞模様がある。河川や潟などの石の下や水草、河辺植物の水中の根など陰に潜んで生息。
NT
アメリカザリガニ(アメリカザリガニ科)
体長は10㎝程度。オスのはさみは大きい。幼体は淡褐色。潟をはじめ様々な水域に生息。さまざまな在来の動植物を食害する。注1)
条件付
クロベンケイガニ(ベンケイガニ科)
甲羅は角型で幅4cm程度に成長。はさみは紫色を帯び、白い顆粒がある。半陸生で河口から下流域の水辺の草原や土手に穴を掘って生活。幼生は浮游生活を行ったのち、稚ガニとなる。
NT
モクズガニ(モクズガニ科)
甲羅は丸みがあり幅6~7cmに成長。はさみには軟毛が密生。繁殖期に成熟した個体は川を下って、河口部で交尾・産卵。孵化した幼生は、稚ガニとなって川を遡上しながら成長。
注1)条件付特定外来生物に指定され、2023年6月より野外に放すことは法律で禁止。
執筆者
山浦 知雄(越佐昆虫同好会)
参考文献
- 豊田幸詞(2019)日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑.緑書房
- 鈴木廣志・佐藤正典(1994)かごしま自然ガイド淡水産のエビとカニ.西日本新聞社