新潟市の湖沼で確認されている貝類
貝類はその大部分が水生種で海にすむ種がほとんどを占めます。しかし中には淡水域や陸域に生活の場を拡げたグループがいます。新潟市の湖沼にも多くの淡水種や水辺にすむ陸生種が確認されています。しかし、近年その多くが減少傾向にあり、原因として水質汚染や開発が大きく関わっていると考えられています。外来種問題も深刻で、在来の固有種との置き換わりも起こっています。
近年、特に淡水産二枚貝類の分類が再編され、新しい和名がつけられた種もあります。最新の研究結果に従って紹介します。
ここでは、新潟市の淡水域で現在見られる種に加えて、これまでに記録されたことのある種も紹介しています。説明の後に大まかに、◎普通に見られる、○数は少ないが生息、△稀だが近年確認記録がある、▲現在確認できない を表示しました。
希少種:新潟市レッドデータブック掲載種
- EX(絶滅)
- EW(野生絶滅)
- EN(絶滅危惧Ⅰ類)
- VU(絶滅危惧Ⅱ類)
- NT(準絶滅危惧)
- LP(地域個体群)
外来種:人為的に持ち込まれた種
- 特定外来生物:特定(外来生物法)
- 緊急対策外来種 :緊急 (生態系被害防止外来種リスト)
- 重点対策外来種 :重点 (生態系被害防止外来種リスト)
- その他の総合対策外来種:その他(生態系被害防止外来種リスト)
マルタニシ(タニシ科)
日本固有種で、北海道〜沖縄に分布する。池沼や流れの緩やかな河川、水田などに生息する。殻長60mmに達し、体層が大きく周縁は角張る。雌雄異体で、卵胎生。
○/NT/水生
オオタニシ(タニシ科)
日本固有種で、北海道〜九州に分布する。池沼や流れの緩やかな河川、水田などに生息する。殻長70mmに達し、各螺層は丸く膨らみ、体層は周縁が角張らない。雌雄異体で、卵胎生。
○/NT/水生
ヒメタニシ(タニシ科)
本州〜九州・中国に分布する。池沼や流れの緩やかな河川、水田などに生息する。殻長30mmほどで、螺状の剛毛列がある。雌雄異体で、卵胎生。春に交尾して夏〜秋に殻長3mmほどの稚貝を産む。
◎/水生
カワニナ(カワニナ科)
日本・東アジアの温帯〜亜熱帯域に広く生息する。流れの緩やかな河川、用水路などに生息する。殻長30mmほど。雌雄異体で、春と秋に繁殖し、300〜400個体の稚貝を産む。
◎/水生
チリメンカワニナ(カワニナ科)
本州・四国・九州に分布する。おもに平野部の池沼や流れの緩やかな河川、用水路などに生息する。殻長40mmに達し、螺肋、縦肋が明瞭。雌雄異体で、5〜10月が繁殖期、100個体の稚貝を産む。
◎/水生
マメタニシ(エゾマメタニシ科)
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・中国・シベリアに分布するが、国内産地は局限的。新潟市内の流れの緩やかな道路脇側溝で確認された。殻長は15mmほどで、明瞭な螺肋がある。
△/EN/水生
ミズゴマツボ(ミズゴマツボ科)
本州・四国・九州・朝鮮に分布する。汽水域に生息するとされるが、新潟市では海岸から離れた平野部の流れの緩やかな河川や用水路に生息する。殻長6mmほどで、螺状に点刻列がある。
△/NT/水生
コシダカヒメモノアラガイ(モノアラガイ科)
日本各地に分布する。池沼や流れの緩やかな河川、水田などに生息する。殻長12mm。殻口は殻長の約1/2。
△/NT/水生
ヒメモノアラガイ(モノアラガイ科)
北海道南部以南の日本各地・東アジアに分布する。池沼や流れの緩やかな河川、水田などに生息する。殻長12mm。雌雄同体。
◎/水生
ハブタエモノアラガイ(モノアラガイ科)
北米原産の外来種。東北地方以南〜中国・四国地方に分布する。池沼や用水路の水面近くに生息する。殻長10mmほど。雌雄同体で、他個体と交尾をするが、自家受精でも繁殖する。
○/その他/水生
モノアラガイ(モノアラガイ科)
北海道〜九州、朝鮮に分布する。池沼や流れの緩やかな河川、水田などに生息する。殻長20mm。かつては全国各地で普通に見られたが、農地改良や農薬の影響などで著しく減少した。
○/NT/水生
サカマキガイ(サカマキガイ科)
北米原産の外来種。日本各地に分布する。池沼や用水路の水面近くに生息する。殻長10mm程度で、左巻きであることが和名の由来。雌雄同体で、他個体と交尾をするが、自家受精でも繁殖する。
◎/水生
カワネジガイ(ヒラマキガイ科)
日本固有種で、本州・四国・九州に分布するが、産地はきわめて極限的。河川下流域や平野部の湖沼のアシやマコモの茎に止まる。殻長10mmほどで、螺層は離れて緩い左巻き。
▲/EN/水生
ヒダリマキモノアラガイ(ヒラマキガイ科)
日本固有種で、本州に分布するが、産地はきわめて極限的。河川下流域や平野部の湖沼のアシやマコモの茎に止まる。殻長6mmほどで、左巻き、明瞭な螺条がある。
▲/EN/水生
ヒラマキミズマイマイ(ヒラマキガイ科)
日本各地・朝鮮・中国に分布する。流れの緩やかな水路の浅瀬、湿地や田圃などに生息する。殻幅6mmほど。雌雄同体で、他個体と交尾をして、ゼリー質に包まれた卵塊を水草などに産みつける。
○/NT/水生
ミズコハクガイ(ヒラマキガイ科)
日本固有種で、本州・四国に分布するが、産地はきわめて極限的。湿地に生息し、水底の枯れ草などに止まる。殻幅3mmほど。ごく少数個体が鳥屋野潟で確認されている。
△/EN/水生
Menetus dilatatus avus(ヒラマキガイ科)
北米原産の外来種。2004年のどんち池での確認がおそらく日本初、その後、M. dilatatus種群は本州各地で次々に確認された。池沼や流れの緩やかな水路に生息し、水中の落ち葉や水草に止まる。
○/水生
ヒラマキガイモドキ(ヒラマキガイ科)
日本固有種で、北海道〜本州に分布する。流れの緩やかな水路の浅瀬、湿地や田圃などに生息する。殻幅5mmほど。殻内に襞状構造があり、殻頂側から透けて見える。
○/NT/水生
メリケンコザラ(ヒラマキガイ科)
北米原産の外来種。在来種カワコザラと混同されており、全国各地で普通に見られるものは、ほぼ本種である。湖沼や流れの緩やかな河川に生息し、水中の落ち葉や水草に止まる。
○/水生
ヒメオカモノアラガイ(オカモノアラガイ科)
本州・四国・九州に分布する。陸生種だが水域に依存し、湿地や水際の植物に止まる。殻長8mmほどで、体層はその約2/3。触角の先端に眼がある。
○/NT/湿地生
ナガオカモノアラガイ(オカモノアラガイ科)
本州・四国・九州・韓国に分布する。陸生種だが水域に依存し、湿地や水際の植物に止まる。殻長10mmほどで、その約8割を体層が占める。触角の先端に眼がある。
○/NT/湿地生
ナタネキバサナギガイ(キバサナギガイ科)
北海道・本州・四国に分布する。新潟市の佐潟、鳥屋野潟のみでごく少数個体が確認されている。陸生種だが水域に依存し、水際の植物に止まる。殻長3mmほど。
△/EN/湿地生
キタノタガイ(イシガイ科)
日本固有種で、東北地方日本海側・北陸・中国地方東部に分布する。河川や潟湖や池沼の砂泥底に生息する。殻長は10cm前後。殻の内側にかみ合わせ構造がない。2020年に新種記載された。
○/水生
カラスガイ(イシガイ科)
北海道・本州・九州・東南アジア・朝鮮・中国・シベリアに分布する。潟湖や池沼の砂泥底に生息する。殻長25cmを超える淡水性最大種。殻の内側に擬主歯はなく、後側歯がある。
○/VU/水生
イシガイ(イシガイ科)
日本固有種で、北海道・本州・四国・九州に分布する。河川や潟湖や池沼の砂泥底に生息する。殻長は7cm前後。殻の内側に擬主歯と後側歯がある。
○/水生
マツカサガイ広域分布種(イシガイ科)
日本固有種で、本州・四国・九州に分布する。湖沼や小河川の砂泥邸に生息する。殻長は60mm前後で、厚い。殻表面にさざ波状の凹凸がある。殻の内側に擬主歯と後側歯がある。
○/EN/水生
ヌマガイ(イシガイ科)
日本・朝鮮・中国に分布する。河川や潟湖や池沼の砂泥底に生息する。殻長は20cmを超える。殻の内側にかみ合わせ構造がない。以前はドブガイA型とされたが、2020年に分類が整理された。
○/水生
タイワンシジミ(シジミ科)
中国・台湾原産の外来種。北海道を除く全国各地。河川や用水路などの砂礫底に生息する。殻長は20mm前後。近年、各地で急速にマシジミから本種へと置き換わりが起こっている。
○/その他/水生
マシジミ(シジミ科)
日本固有種で、東北地方以南・四国・九州に分布する。湖沼や河川、用水路などの砂礫底に生息する。殻長は30mm前後。近年、各地で急速に外来種タイワンシジミへと置き換わりが起こっている。
△/VU/水生
ドブシジミ(ドブシジミ科)
本州・四国・九州に分布する。流れの緩やかな河川や用水路などの砂泥底に生息する。殻長は8mm前後で、殻は簿質で透明感がある黄褐色。卵胎生で稚貝を放出する。
○/水生
執筆者
野村 卓之(にいがた貝友会・日本両生類研究会)